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HOSEI Orange Community
2020.10.21
インタビュー

卒業生インタビューVol. 8 山本新一さん

――まずは自己紹介からお願いします。

山本 2007年3月に経営学部経営学科を卒業する少し前に、友人と共にカフェ&バーを開業しました。当初はその収入だけでは生活が厳しく、昼間は会社員、夜はお店という生活を6年ほど続けました。やがて経営が軌道に乗り、合同会社prove LiFE(プルーブライフ)を設立。現在は飲食店を2店舗、キッチンカー(移動販売車)を3台運営しています。

他にも、キッチンカー専門のポータルサイトの運営、野外イベントに最適なステージトラックの運営、千葉で開催している野外フェスティバル「Nuts Party」のオーガナイズ、デザイン・動画制作など幅広く事業を展開しています。

――飲食店やキッチンカーを事業にしようと思った理由、また現在の多角的な事業展開に至った経緯を教えてください。

山本 飲食店という仕事を選んだのは、居心地のよい空間作りに興味があったからです。自分のお店で自分の作った料理や自分の選んだ音楽でお客様に楽しんでいただけたら、自分もハッピーだと思い、千葉市内に2店舗立ち上げました。

ただ、店も自宅もすべて近距離にあり、狭い世界で完結する生活スタイルに疑問を感じるようになりました。「もっと広い世界で勝負したい」と始めたのがキッチンカーです。

次第にキッチンカーの売上が伸び、台数も2台、3台と増えていきました。反面、自分たちだけでは多数の依頼に応えることが難しくなり、立ち上げたのがポータルサイト「KITCHENCAR’S JAPAN」です。それまでキッチンカー業界では、仲介業者に仕事の依頼が集まり、そこでキッチンカー事業者が選定され現場に派遣される、というパターンが主流でした。キッチンカーを呼びたい人と事業者が直接コンタクトを取れたらもっと便利になるし、業界も盛り上がると考えました。

その後、キッチンカーの依頼とあわせて、ステージ設営や音楽アーティストのブッキングについての相談をいただくことが増えました。そこで「食と音楽」をセットで提供できるように作ったのが、トラックの荷台が舞台になるステージトラック「SNUFKiN」です。

このように、自分たちのやりたいこととお客様からのニーズを掛け合わせていった結果、弊社の事業も思わぬ広がりを見せていきました。

――仕事でやりがいを感じるのはどのような時ですか。

山本 ビジネスを通じて社会に貢献できていると感じる瞬間ですね。キッチンカーはフェスティバルやイベントなど、楽しいところに食事を届けるイメージがあります。一方、災害が起こった時に被災地に温かい食事を届けられるのも、機動力とノウハウを持つ我々キッチンカー事業者であると考えています。そうした思いで被災地に食事を届ける仕組みを整備していた最中、千葉県を襲った2019年秋の大型台風。「今こそ俺たちがやるしかない」と、どこよりも早く被災地に食事を持って駆けつけることができました。

また、今回のコロナ禍では、医療従事者や役所職員をはじめとする、いわゆるエッセンシャルワーカーの方々に無料で食事を届ける取り組みを行いました。感染リスクがあるため最低限の会話しかできず、極度の緊張感が漂う現場にキッチンカーで駆けつけた時、食べる前からものすごく喜んでくださる皆さんの様子を見て、「やって良かった」と心底思いましたね。

――大学時代の思い出を聞かせてください。

山本 とにかくストリートダンスに夢中でした。当時は有志で取り組んでいましたが、現在約350人が所属する巨大サークル「HSD(HOSEI STREET DANCE)」の前身です。自分の姿が窓ガラスに映るようになる夕暮れから、仲間たちと練習に励みました。多数のコンテストやダンスバトルに参加したのは良い思い出です。

僕が行っていたブレイクダンスは、チームで動きを合わせる事もそうですが、それぞれの「個」を生かすジャンルのダンスです。「個」の特徴を組み合わせて良いものを作るというスタイルは、今の経営やチームビルディングに大きな影響を与えていると感じます。

――今の大学生や若者に伝えたいメッセージはありますか。

山本 生きる上で一番大切な「幸福」に目を向け、広い視野で将来を考えてもらいたいですね。大企業に入りたい、安定した職業に就きたいと思うのも1つの考え方ですが、それだけではない多様な生き方があります。

お金は必要な時に必要な分があれば十分だと考えています。「初任給が数万高いから、こちらの会社を選ぶ」というような選択はナンセンスだと僕は思います。必要なお金が少ないうちは、自分のアンテナを広げたり、さまざまな経験を積んだりできる環境を選ぶ方が人としての深みが出ると考えています。

数年前に一度、法政大学の就活生の皆さんに仕事やキャリアについてお話しする機会をいただきました。若い世代の皆さんの世界観や選択肢を広げる手助けになることが年上の役割だと思っていますので、今後も小中高大を問わず、いろいろな教育現場に行って自分ならではの体験談や考えをお伝えする機会があればと願っています。それはもちろん、皆さんにとって参考にするだけでいいと思います。

――今後の目標やビジョンについて聞かせてください。

山本 「やりたい事を仕事にする。」という理念のもと会社経営を行っていますが、同時に社会から必要とされる仕事、必要とされる企業にならなくては、それは実現不可能だと思っています。そういう意味でも、社会課題の解決につながる取り組みは続けていきたいですね。

現在、「環境」への興味が強く、「生ゴミゼロの完全循環型レストラン」をオープンさせたいと計画中です。既存の店舗でも「脱プラスチック営業」に挑戦しており、紙ストローや木製フォークを導入しています。「海をきれいに」という高尚な思想が強いというわけではありませんが、経済活動を行う上で環境問題への対応はルールの一つと考えており、また一事業者として社会に対するメッセージはいつも発信していきたいです。

他にも、キッチンカーをもっと日常に普及させたい、飲食業を憧れの職業にしたい、といった夢や目標はたくさんあります。また個人的な取り組みとして、2011年に書籍を出版しているのですが、次は映画作りに挑戦したいと目論んでいます。